この日の気象条件は、晴れて南風、やや強めの3~5m/s。練習生は50代男性1名。
離陸時の早い段階で傾くことが多く、そうなるとそのフライトは傾きの修正に終始することになってしまう、という悩みを受けて、対策を伝授しました。
動画と並行して見ていただきたいのですが、離陸時に傾く原因は、たいがいが、機体が上を向いてしまい速度が落ちることです。速度が落ちると機体は不安定になり傾きやすくなります。しかも、速度が遅いと操縦の効きが悪くなるので、傾きを直すのも難しくなります。機体の先端部をノーズというので、「ノーズを上げちゃダメ」と言われます。
では、なぜノーズが上がってしまうのか。
私が思うに、昔からのハングパイロットが「前傾して走れ!」と言ってしまうことに一因があります。
離陸動作を細かく分析していくと、初動、加速、加重の3段階にわけることができます。
1.初動:ゆっくりと動き始める。ハンググライダーの構造上、重量のある部品の大半はパイロットよりも上にあるので、急に走り始めると機体は上を向いてしまう(ノーズが上がる!)。ゆっくりと動き始めると空気に機体を乗せることができるので、すぐに軽くなる。
2.加速:浮き始めた機体を、ひじと手の2点で保持して加速する。2点で支えることにより、迎え角(進行方向に対して機体が上を向く角度)を一定に保てると同時に、浮いた機体をひじで押すことで効果的に加速することができます。
この段階で体を前に倒してしまう(前傾!)と、ひじがアップライト(三角形のコントロールバーの斜辺の2本)から離れてしまいます。こうなると、迎え角は上を向いてしまう(ノーズが上がる)だけでなく、ひじがついていないので機体を直接加速することができなくなってしまいます。頭を下げて一生懸命走っているパイロットは、その労力の割には機体を加速することができないのです。
3.加重:機体が充分に浮いてくると、ハーネスの脚ベルトがパイロットをつり上げ始めます。こうなったら初めて、体を前に倒して体重を預けて走るようにします(これを加重といいます)。ハンググライダーの推進力の元は、パイロットの重さです。つまり、体重を乗せれば乗せるほどハンググライダーは速度が上がり、速度の2乗で揚力(浮く力+前進力)が大きくなります。「走れ!」と言われると脚を前に出して走ろうとしてしまいますが、これも逆効果。脚を先に出すと機体に乗せたいはずの体重を脚で支えてしまうので、パイロットの重みが乗らなくなってしまうのです。ハンググライダーで体重を乗せながら走るには、「前に倒れる」のが効果的です。倒れそうになると勝手に脚が前に出ます。そうすると、自然に加重することができます。
まとめると、離陸動作の前半では体を倒さず頭を高くしたまま、ひじをアップライトにしっかりと付けて加速する。ハーネスの脚ベルトが自分をつり上げ始めたら、体を前に倒して、その後から脚が出るようにする。
結果的に前傾していて、結果的に走っていますが、ただ「前傾して走れ!」と言われても、この姿になれるかどうかは疑問です。「加速」の段階で前傾してしまって、離陸失敗の可能性を高くしてしまうことさえあると思います。私は「前傾して走れ」と教えることはありません。前傾するタイミング、体重を乗せて走る方法、そのための練習法といったことを、練習生が納得できるように伝えるようにしています。
この日の練習生は、以上の練習により離陸が安定しました。離陸が安定したので滞空時間が長くなり、空中での速度管理も反復練習できました。この1日で、安定した直線飛行ができるようになりました。
練習のダイジェスト動画です。

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